「よそ者」という言葉は悪い意味で使われることが多いでしょうが、ほめ言葉として「よそ者だから書けた本」と言いたくなるルポタージュです。原著は英語でGhosts of the Tsunami: Death and Life in Japan。翻訳者も渾身の翻訳だったのではと感じます。
宮城県石巻市の大川小学校。津波に「向かって行ってしまった」ために犠牲になったたくさんの児童と教職員。
地縁血縁が強い土地柄に暮らし続ける犠牲者の周辺の方々が本音を話せるのは、言語も見た目も住むところも、おそらく一生重なり合うことがない外国出身の著者が適任だったのではないのでしょうか。
どれが正とも誤とも言えないそれぞれの状況、それぞれの立場が浮き上がってきて、悲しいのに読むのが止められないという不思議な状態になりました。
一方、「幽霊」の方はいわゆる憑依現象とそれに退治する宗教者の話ですが、単なるオカルト話ではなく「あれほどのことがあったのだから、そんなこともあるかもしれない、おかしくなってしまう人がいてあたりまえ」という気になってきます。これも著者の立ち位置が絶妙なことと、描写の技量でしょう。
津波の霊たちーー3・11 死と生の物語