本書は著者が著者の言う「国策捜査」によって逮捕され、512日間東京拘置所に拘置された間の獄中ノートと書簡で構成されています。
拘置所というのがどんな場所なのかまだはっきりとしたイメージはありませんが、書いてあることを読む限りでは、ものすごく非人道的なことが日々展開されているというわけではないのだなという印象を受けました。非人道的なことが展開されているのではという先入観を持っている自分にそもそも問題がありますが・・。
その東京拘置所での著者の学習ぶりに驚愕。哲学や語学をどしどしとやっつけていくのです。日々の日記の表記は淡々としているのですが、その量とスピードを想像すると「どしどし」という形容になってしまいます。
学生時代に神学を専攻し、ロシア語に堪能な著者が「なぜそうなれたのか」が、その勉強ぶりで理解できます。もともと難解なものに取り組み続けることができる資質をお持ちだったのでしょう。
なるほどロシア語に堪能になれる人なら、ドイツ語にもラテン語にも「格変化がわからない」などと弱音は吐かないだろうなぁ。聖書にがっぷり四つに取り組める人なら、難解な哲学書も友となるのだなぁ。と感心しました。
それにしても不思議なのが、神学や哲学と、ロシアに関する現実的などろどろとが同じ人の中で共存しているところ。また、これほどの人が法律には興味がなくいわゆるリーガルマインドの視点は持たない(弁護士におまかせ)でいるあたりも、「哲学と法ってそんなに違うかな・・」と首をかしげてしまう点でした。
いずれにせよ著者がマスコミから「怪人」扱いされていた理由はこの本を読んで理解できました。
ところどころに耳の痛い表現もあり、学習のモチベーションUPにも使える本かもしれません。
幸いなことにこれを読んでも「拘置所に入りたい」とはまったく思いませんでしたが、日常から隔絶された場所で学習に没頭するという方法は有効かもしれないという印象を持ちました。
作家の「ホテルにカンヅメ」(もともとは旅館に「館詰め」でしょうか?)もきっとこれと同じ理由ですね。
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