最も筆が活き活きとしているのは低賃金、単純労働のつらさ、むなしさについて語っているところです。著者は話の流れから言って「秘密主義企業アマゾン」および「アングロサクソン流経営」を批判したいという姿勢のようです。
しかし正直言って他の日本企業であっても、現場労働は同じように苛烈だと思いますし、そもそも受託企業として現場を仕切っているのはばりばりの日本企業の日通です。著者が引き合いに出している「自動車絶望工場」(鎌田慧・著)の過酷な労働だって日本企業です。というわけで途中でこちらが頭を切り替えて副題の「階層化する労働現場」のルポタージュとして読みました。
伝わってくるのは、淡々とした現場の「しょうがない感」です。その淡々とした様子に違和感を覚えますが、もし自分が同じ状況におかれたらやはりデモ行進もせず、ストも起こさない淡々とした労働者になると予感します。
「嫌ならやめる」という手段があり、この本の中でも、かなりの数の人がそれをあっさりと実行していくのが一種の救いでしょうか。
「自動車絶望工場」(かなり昔に読みました)と合わせて読むと、「格差社会」を考える良いテキストになります。
潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影―躍進するIT企業・階層化する労働現場 横田 増生 情報センター出版局 2005-04 売り上げランキング : 22622 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
自動車絶望工場―ある季節工の手記 (講談社文庫) 鎌田 慧 講談社 1983-09 売り上げランキング : 22723 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
0 件のコメント:
コメントを投稿