2008年3月23日日曜日

外国語の水曜日:黒田 龍之助、著

 表紙がなんだか古典的学問を連想させるのと「学習法としての言語学入門」という副題から読み通せないかもしれないと思いつつ読みはじめましたが。いやーもう素直に面白かった!
 いきなり引用してしまうと


 わたしは言語というものに幅広く興味があり、いろいろな国や地域の文化に強く惹かれる。その中でもロシアやスラヴ地域には格別の思い入れがある。自分が情熱を込めてやっていることは、やっぱりほかの人にも分かってほしいと思う。どうしたら分かってもらえるだろうか?
 ここでわたしは、ロシア語は将来絶対に役に立つからお買い得です。などという、怪しげな先物取引を勧誘するつもりはない。(P.9)


 なんと正直な。失礼ながら思いっきり爆笑してしまいました。
 著者は理系大学のロシア語教師という、想像するだけでなかなか生徒獲得が難しそうな環境でお仕事をされています。そんな中で、研究室に集まってくる面々とそれぞれの(著者本人も含む)外国語学習模様を紹介する第一章で笑いまくってしまいました。
 第2章からは「第二章 外国語幻想」「第三章 学習法としての言語学入門」「第四章 本と映像に見る外国語」と少々「言語学」に近づいていきます。
 第三章は大学での講義ノートをもとにまとめられています。なかでも以下の一節で目から鱗。


 確かに英語は便利だ。日本人だったらある程度勉強しているし、世界中で多くの人が理解してくれる。でも、英語だけが外国語ではないのだ。「ナントカ語一筋」なんて、決める必要は何もない。変な操をたてる必要は全然ないのである。いくつでも勉強していい。なんたって、みなさんはプロではないんだから。(P.258)


 あーそうか、そうだよね、プロ(言語を職業として生計をたてている)ではないんだから、何語を勉強してみたっていいんだ。趣味なんだから。そうだそうだ。
 しかし、「いくつでも勉強していい」と「プロ」の人が言ってくれるのは心強い。どちらかというと、「その道一筋」が推奨される世の中で、こういう後押しの一文は嬉しいものです。
 というのは、実はわたくし、英語もままならぬ身なのに、他の言語にも興味がありまして・・。英語は少々「生計をたてる」方にも関わっていますので、あまりおそろかにもできませんが、他の言語は純粋に興味があるだけなのです。「うーん◇◇語勉強してみようかな・・」とつぶやいてみても「そんなことをやって何が楽しいの?」というようなやや否定的な反応が多くて、ちょっと気持ちがあとずさりしかけているところでした。
 でも、この本で背中を押してもらったので、とりあえず手をつけてみてから考えることにします。
 「しなくても困らない」ということは、つまり習得まで10年計画、20年計画でも良いわけですし。できなくても業務に支障がでるわけでも、食料品が手に入らないわけでもない。
 それにしても、語学の会話練習にフィクション導入というのは考えつきませんでした。本文中には、外国語教師三人が、新たな言語としてイタリア語を習う過程で「私はイタリア人です」と「外国人ごっこ」をする例が紹介されています。これはいい手ですね。いずれ先生につく機会があれば試してみたいものです。
 

外国語の水曜日―学習法としての言語学入門外国語の水曜日―学習法としての言語学入門
黒田 龍之助

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